三島由紀夫 「橋づくし」
舞台の写真 G 備前橋


小弓が脱落する直後の、6番目に登場する橋は堺橋であるが、現在において姿が消されているため、写真を提供することができない。作中、「備前橋は欄干も抛物線をなして、軽い勾配の太鼓橋になっている」と書いてあるが、現在において備前は欄干が見えず、橋の片側に駐車場になっているため、橋に見えないのである。微かな勾配が残っているとはいえ、「太鼓橋になっている」ことはいいがたいだろう。築地本願寺は現在においても橋の向こう側にある。しかし、右上の写真を見ると分るが、お寺の気配は殆どない。作品当時においてみなが一人で備前橋を渡った場面は現在における風景と全く異なるものだったと考えられる。  次へ
左下の写真は築地本願寺側から備前橋を振り向く写真である。この視点から見ると、備前橋は全く橋に見えないのである。「橋づくし」初出の1956年当時において、橋めぐりは大変賞深い行だっただろう。しかし、2002年現在において、橋がなくなっているために成し遂げることが不可能である。その上、残っている六つの橋を渡ったとしても、装飾的な橋、つまり「川のない橋」になっているため、橋めぐりの意義性が薄れてゆくのみであるといえる。残念ながら、築地における橋めぐりの時代は始まって直ぐに終わったといえよう。
「三島由紀夫 「橋づくし」: 舞台の写真と解説」 (c)2002 Daniel C. Strack

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